M&Aコラム

2015/01/27

売手オーナー 古田土勉さん - 2013年に㈱神奈川建築確認検査機構を外資系のB社にご売却

M&Aインタビューの第1回目は、2013年に㈱神奈川建築確認検査機構(以下“KBI”)を外資系のB社に売却された古田土勉さんです。このM&Aにおいて弊社の立場は買手側でしたが、弊社平山はディールの最初から最後までどっぷり浸かってお手伝いをさせて頂きました。

【古田土勉氏】1954年神奈川県生まれ。東海大学卒。市役所勤務の後、同級生の井上氏と2001年に神奈川建築確認検査機構を設立し、2013年にB社に同社を売却。現在、㈱既存住宅保証センターと、すまいと生活㈱、を経営。

 

平山: 古田土さんとは、KBIの売却の後もずっと親しくお付き合いさせて頂いている訳ですが、あらためてKBIの成り立ち、M&Aに至る過程とその後の状況をお伺いしたいと思います。まず事業の始まりはどのよう形だったでしょうか。古田土さん2.JPG

古田土: 私と設立のパートナーの井上は高校、大学の同級生で、二人とも市役所で建築の監督行政に携わっておりました。建築確認というのは建物を新築する際に建築基準法に適合しているか審査する行政行為で、元々は全て役所が行う仕事だったのですが、実際には役所のマンパワーが足らずに現場検査が出来ない状況でした。阪神淡路大震災の際に現場検査をしなかった事による被害がかなり出ました。そのため建築確認を民間に開放すべき、という意見が強まり、平成10年に法律の改正により、登録制ですが民間事業者が建築確認事業を営むことが出来るようになりました。その流れに乗って、我々は役所を辞めて平成13年にKBIを創業しました。最初は役所以外に同業者が少なかったというのもありましたが、お客さんのニーズに合わせて迅速な検査を心掛けたところ、使い勝手がよかったのか、かなりのペースで仕事が増えていき、一時期はお客さんが会社の前に列をなしている状態でした。会社の規模も急激に拡大し、気がついたら従業員は140人、売上は10億円近くになっていました。

M&A(売却)の動機

平山: それはかなり順調なスタートと発展ですよね。

古田土: しかし、創業してから数年で次第に不安になってきました。長期的に考えると、日本の人口は減少傾向なわけで、将来的に新築がこれまで通りに伸びていくとは考えにくい、自分達も年を取って行くしいつコロッといくかもわからない、リーマンショックのような景気の変動もあるかもしれない、等と考えたときに、はたして当社が長期的にこのままやっていけるのか疑問でした。また、会社の経営の仕組みも個人事業から始めた“家庭的な経営”みたいな感じだったので、さすがにこの規模になると会社をうまくコントロールできないな、とも感じていました。

平山: その時に一番心配に思ったのは何ですか?

古田土: やはり従業員のことですね。このままで100人を超える社員全員とその家族の生活をずっと支えていけるだろうか、と考えるととても不安でした。それで売却する3年ぐらい前(2010年あたり)から、何か具体的に対策を考えなければならない、と思うようになり、売却による事業承継を考えだしました。

平山: その時にどのような会社を買手としてイメージされましたか。

古田土: 私は大企業に買ってもらいたいと思っていました。オーナー系の企業に売却すると、またそのオーナーさんが引退する時に承継問題が起きます。それよりは、永続的に回っている大企業であれば、社員もそのような心配をせずにすむ、と思ったからです。そんなことを考えているときに平山さんから連絡があって、話を聞いてみようか、と思った次第です。

平山: それはまさにいいタイミングだったのですね。それで会ってみるとその買手は外資系だったわけですが、何かそこに拒否反応などなかったですか。

古田土: それは別になかったです。業界内で名前は聞いていましたし、最初から日本人の方が対応されて、飲みにも何回もお付き合い頂き、普通の常識ある人達だなって感じていたので、違和感はなかったです。泥臭い話も一緒になって考えてくれるような気がしましたし、実際そうでした。

実行

平山: 確かに今回のM&Aでは双方で飲みに行った回数はかなり多かったですね。(笑)さて、M&Aを実行する際に多くのオーナー経営者は感情的になられることが多いのですが、今回古田土さんはずいぶんと安定しているように見えました。

古田土: 私も人からやり方を聞いていたので、それである程度分かっていたということもありました。あと、自分一人ではなくてパートナーの井上の分も考えてあげなければいけない、という気持ちもありましたので、あまり感情的になっている暇がなかったということもあります。もっとも、腹が立ったことは全くなかったわけではないですが。(笑)

平山: 何回か、ムッとされたところをお見受けしたのを覚えております。(笑)

古田土: まあ、交渉の最中は当然感情の起伏はいろいろありましたが、最終的には、お金は別として、従業員の扱いその他に関する条件は、こちらとしては満額回答に近いところを頂きましたので、本音では大変満足しております。従業員への対応などにも気を使って頂きましたので、B社さんには感謝しています。

平山: 確かに、買手として譲歩できるところはしましたが、こちら側の守るべき一線は譲っていませんので、お互いに上手にコミュニケートでき、落としどころもうまくいった、いいディールだったのではないかと思います。あと、何かプロセスの間にこれは頭にきた、とか勘弁して欲しかった、というものはなかったですか?

古田土: これが絶対に困る、というものはありませんでした。ただ、こちら側の弁護士さんが、私達はもういいと言っているのに、細かいところに執着して、なかなかゴーサインを出してくれず、調印がデッドラインのぎりぎりのところまでずれ込みました。あの時はどうなることかと思いました。

平山: そうでしたね。弁護士事務所の方で前の日から翌朝まで作業をやったでしょうか。私も買手側なのに古田土さんと一緒にその弁護士事務所にずっと詰めていましたよね。M&A専門の弁護士さんではなかったですが、今から考えると一生懸命やってくれたと思います。私はイライラして失礼なことも言ってしまいましたが。(笑)さて、M&A完了後ですが、古田土さん及び従業員の皆さんの状況はいかがでしょうか。

M&Aその後

古田土: 私はKBI株式の売却を機に代表、役員を退き、現在は顧問という立場です。KBIの日々の業務にはタッチしておらず、必要に応じてお客さんのところに行ったり、業界団体や役所との間をつないだりしています。思ったよりうまい具合に新しい体制に移行できたので、やることはそれほど多くはありません。自分の時間の多くは、新しいビジネスの㈱既存住宅保証センターと、家事代行の、すまいと生活㈱の仕事に充てています。2社とも見通しは悪くない事業ですし、従業員も少ないので気が楽です。

平山: KBIの従業員の方々はいかがですか。

古田土: 殆どの人がM&Aによって体制が変わってよかったと思っているのではないでしょうか。今まで、いわゆる家族経営スタイルでやってきたので、新しい株主の下での大企業的な管理体制は煩わしい、という声も当初はちらほら聞こえてはいました。しかし、それは大企業グループでやっていくには乗り越えなければいけないことだし、実際、皆かなり慣れたようで、最近はあまり不満は聞こえてきません。むしろ安定した体制の下に入ったので、安心できたという声が強くなってきています。しかし、残念ながら新しい体制が不満でKBIを辞めた人が数名います。彼らは多くはその後の1年ちょっとの間で2,3回転職しているので、B社さんに馴染めなかったというより、普通の会社組織というものに馴染めかった感があります。この点は彼等を教育しきれなかったことについて私も残念に思っています。また、面白いことに、公務員出身の従業員はM&A後に一人も辞めていません。大組織で働くことに慣れているのかもしれませんね。

平山: 執行役員などの比較的若手の経営陣の方々はいかがですか?

古田土: 今までは私と井上が殆どのことを決めてしまっていました。M&Aにより、私達が経営陣からいなくなって、執行役員だった彼等が私達がいたポジションに近いところに入って経営を取り仕切るようになりました。今では非常にやりがいを感じて、いきいきしているようです。彼らはこのM&Aを通じて一皮むけて、成長したように感じています。

平山: 最後に、このM&Aをやってよかったと今も本当に思ってらっしゃいますか?

古田土: はい、思っております。長年考えておりました事業及び従業員の承継がきちんと出来、肩の荷がおりました。また、消費税上げ後に建築確認の業界も業績は急に落込みましたが、そのまま自分達がKBIを所有していたらどうなっていただろう、と考えると空恐ろしくなります。大手の傘下だから従業員も安心していられる面もあると思います。

平山: いろいろお話を伺うことができ、どうもありがとうございました。ご売却を喜んでいらっしゃるということを伺って、私もうれしいです。ぜひ今後ともよろしくお願い致します。

古田土: こちらこそ。

(2014年12月)

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